池の平湿原・三方ケ峰の山裾に「忠治の隠岩」（ちゅうじのかくれいわ）の標識の付いた巨石群がある。「江戸時代の侠客（きょうかく、ヤクザ）国定忠治が（上州赤城から逃げてきて）隠れたという伝説の岩」と説明されている。岩石は、数十万年前（約30万年前）、烏帽子・浅間火山群の三方ケ峰火山の活動で出来た溶岩の塊だ。
　
　　　　　　池の平湿原・三方ケ峰　　　　　　　　　　　　　　　　　　忠治の隠岩

その1．池の平湿原・篭ノ登山（2013/5 - 9）+
その2．池の平・三方ケ峰（2009/6）

この伝説を調べたくて、忠治の本を図書館（御代田・軽井沢）で探して読んだ。
・「国定忠治」津本　陽（光文社、2006/2）
・「新説　国定忠治」檀　一雄（双葉新書1964/8）
・「講談名作文庫　国定忠治」野間　省一（講談社、1976/8）
・「国定忠治」高橋　敏（岩波新書、2000/8）

津本　陽　 「国定忠治」

檀　一雄　 「新説　国定忠治」

野間省一　 「講談名作文庫　国定忠治」

高橋　敏　 「国定忠治」

国定忠治（長岡忠次郎）は江戸時代末期1810年、上州（群馬県）赤城山の山麓 国定村（伊勢崎市国定町）に生まれ、1850年大戸関所(吾妻郡東吾妻町）で磔（はりつけ）の刑になる。無宿人博徒だが、お上の手先となり十手をあずかる「ニ足の草鞋（わらじ）」をはかず、天保の大飢饉に、お上に抗戦し、飢えに苦しむ農民に米銭を与え救済した侠客として（昔は「赤城の山も今夜（こよい）限り、- - 」の名セリフなどで）講談や芝居・映画になっていた。
国定忠治は、関八州の役人（関東取締出役（とりしまりしゅつやく）に追われ、信州など（関八州の管轄外）に（何回も）逃げた。そのルートに
(1) 大戸から信州街道の狩宿・鎌原・大笹・鳥居峠を越え、大笹街道・須坂・長野へ抜けるルート、
(2) 草津道から渋峠を越え、中野に至る間道
が良く使われたようだ。警戒が厳しいと、
(3) より目立たない広大な浅間山麓のけもの道を利用し、浅間山麓・鬼押出しの六里ヶ原を横断して、信州小諸に抜ける車坂峠など。
そしてほとぼりがさめると、また赤城山・国定村に戻る。このルートに池の平湿原・三方ケ峰の山裾「忠治の隠岩」が出てこないかと、本を見ていたら、
檀一雄の「新説　国定忠治」に、”三方山の岩屋”が出ていた。
“忠治の一行十八人が- - - 、早春の浅間の裏をまわり、- -目的の三方山にぬけだしていった- - - - 三方山にさしかかろうと言う山のハザマで、どえらい雪崩に逢った。- - - 　「- - - 親分、岩屋が- - - 」。なるほど、雪原の中に岩がそそり立っていると思ったら、大きな洞窟がえぐられている。- - - 岩屋から祢津（ねつ）へ- - - 。　忠治は三方山の岩屋に住みついて、時々麓の町々- - - に- - - “
まさに、池の平湿原・三方ケ峰の山裾「忠治の隠岩」に対応すると思われる。

コラム：忠治の隠れ岩は、赤城山に「忠治の隠れ岩屋」があり、志賀高原にも「忠治の隠れ岩」がある。